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戦場に響く鈴の音
第23章 笑顔
「皆、農家の子か?」
茂吉に確認する。
「迫村の田井兄弟は商人の子です。正太は農家の5人兄弟の末っ子って奴なので…。」
「全員、茂吉が拾ったのか?」
「天音の訓練所を卒業してから俺の下に付く兵士なんか居やしませんからね。俺の場合は好きなだけ勝手に兵を集めろと羽多野様から言われたもので…。」
茂吉が集めた兵は1000人まで増えたと言う。
普段は各々が住む村に散り、茂吉が必要だと声を掛ければ集まる仕組みらしい。
大したものだと、ある意味は感心する。
貧しいからと野盗に堕ちかねない連中を茂吉に纏めさせれば、黒崎の領地が守られる。
堅物の羽多野にそんな知恵を付けたのは、およそ雪南だろう。
茂吉が用意した馬に乗り、柑の街の中心部にある寺嶋の屋敷へと迎えば、茂吉を慕う兵達までもがゾロゾロと俺について来る。
ただ鈴だけが笑ってる。
「多栄の為に用意された大名行列みたいだ。」
鈴はそう言って多栄を茶化すが当の多栄は
「私はただの護衛兵士ですよ。」
と情けない顔で叫んでる。
「茂吉、寺嶋の屋敷に着いたら兵達は解散させろ。これでは街の人が何事かと不安に思う。」
「あー…、ちょっと人数が多過ぎましたかね?旦那の荷物持ちをしたい奴は来いと声を掛けただけなんすけど…。」
荷物持ちに50人も要らんだろ?
そう考えながら茂吉を睨めば
「2、3人を残して帰らせますから…。イヒヒ…。」
と下卑た笑みを浮かべる茂吉が頭を掻く。
「春までに後、1000人ほど増やせるか?」
茂吉を出世させるには、実績を積ませる以外の手段がない。
「あの西元の時に比べりゃ楽勝ですよ。アイツらの仲間で黒崎様の元で働きたいと希望してる奴は5万と居やす。」
「金は雪南に言って出して貰え。」
「任せて下さい。」
茂吉の指示でおかしな大名行列は寺嶋の屋敷の前まで到着する。