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戦場に響く鈴の音
第24章 演奏



「頭から…、花が生えとる。」

「それは鈴が馬鹿っぽく見えるという意味か?」

「女子らしくて可愛くなったと褒めてんだよ。」

「この鈴蘭とは、本当に可愛らしい花だな。」


首を傾げて揺れ動く鈴蘭の花を見る鈴がふふと小さく笑う。


「旦那っ!こっちこっちっ!」


露店の向こう側で茂吉が俺と鈴を呼ぶ。


「どうした?」

「嬢ちゃんが好きな饅頭屋が向こう側に出てますよ。新作の栗饅頭とかいうのが早く買わないと売り切りれるらしいから…。」


茂吉が言う店の前まで行けば、街中の女子が来てるのかと思うほど並んでる。

女子ばかりが並ぶ行列の真ん中には、むさ苦しい男が2人で場所を取っている。


「田井兄弟を並ばせたのか?」

「旦那と嬢ちゃんは欲しい饅頭を言えば、後はあいつらが買って来ますよ。」


女子の中に並ぶ勇気の無い俺は助かると茂吉に感謝する。


「神路は人使いが荒い。」


と田井兄弟に同情するのは鈴の方だ。


「あの行列の中へ俺に並べと言うのか?」

「ご領主様であっても、決まりは決まりだ。並ぶのが当たり前のことなんだぞ。」

「鈴だけ行って来い。」


男だけで並ぶ田井兄弟が流石に可哀想だと鈴を送り出す。


「旦那…、春には天音を出ると聞いておりやすが…。」


鈴が消えれば茂吉の表情が変わる。


「その為の人集めだ。茂吉のわかる範囲で手練になりそうなのは居るか?」

「15~16のガキなら、今から訓練すれば…。」

「そいつらも天音に来させろ。春までに使えるようにする。」

「10人程度なら…。」

「それで良い。」


春には戦場に出る。

鈴が女子として楽しめるのは今だけだと思うと少し胸が痛む。


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