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戦場に響く鈴の音
第24章 演奏
桶に入れた湯で鈴が俺の背中を流す。
「いい湯だ。後でゆっくりと入りたい。」
鈴が小さな声で呟く。
「好きなだけ入れば良い。柑は鈴にやる。」
俺が貰う街だ。
だから鈴にくれてやる。
「要らない。多栄や多栄のおっ母が静かに暮らせる街であれば鈴はそれで良い。」
贈り物が大きければ大きいほど、鈴は拒否する。
「欲のない奴だな…。」
「欲ならある。今夜は琴が聴けるのだろう?早く行こう…。」
はしゃぐ鈴が俺の手を引く。
着替えを済ませ、簡単に髪を束ねてから鈴を抱き上げて離れから本館に繋がる通路を抜ける。
「皆様、既にお待ちですよ。」
と本館の入り口で俺達を待っていた女将が頭を下げる。
女将の案内で宴用の広間へ向かえば
「見よっ!この肉体美っ!」
と騒がしい声が聞こえて来る。
茂吉が掻き集めたゴロツキ達は、礼儀など知らずに勝手に騒いで遊んでやがる。
俺と鈴が広間に入れば、既に酒を喰らってると思われる茂吉が上座に座り、10人ばかしの兵が茂吉を囲むようにして並んでる。
その真ん中では上半身が裸のままの田井兄弟が両手を天に突き上げるようにして自分達の身体を見せびらかす。
「随分と盛り上がってるな。」
こういう雰囲気は嫌いじゃない。
俺がガキの頃に居た、野盗の窼でも毎夜のようにゴロツキ達の馬鹿騒ぎが行われていた。
「おい、若殿様の前だぞ。少しは遠慮しろ。」
俺に気付いた茂吉が慌てて馬鹿騒ぎを治める。
宴の席は俺と鈴の為の高座が用意されている。
そこへ、ゆっくりと腰を下ろせばさっきの馬鹿騒ぎが嘘のように広間がシンと静まり返る。
茂吉が集めた10人の顔を見渡す。
若い男ばかり…。
天音の訓練に出す俺用の兵士達だ。