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戦場に響く鈴の音
第25章 家族



鈴の気持ちを思うと俺は帰るべきではなかったのかと情けない迷いが出る。


「鈴…。」


いつもの様に手を出せば、琴から離れる鈴が俺の懐へと飛び込んで来るから安堵する。


「鈴…、手が…。」


指先が擦り傷だらけだと焦る。


「ああ、大丈夫だ。琴の弦を押さえるとこうなるらしい。」

「らしいって…。」


みっともなく狼狽える俺へ絖花の方が頭を下げる。


「申し訳ごさいません。姫様には、ゆっくりと練習すれば良いと申し上げたのですが…。」

「絖花は悪くないぞ。鈴がやりたいと言ったのだ。」


原因はわかってる。

屋敷に帰って来た事で鈴は不安を感じている。

俺が鈴の傍に居てやれない不安…。

仕事までは許せても、彩里が待つ離宮へ通う事となる俺の居ない時間を紛らわす為に鈴は琴にのめり込む。


「根は詰め過ぎるな。」


鈴の傷付いた指先を舐めて言い聞かせる。


「舐めても治らぬ。」


琴の稽古を取り上げられたくない鈴が口を尖らせる。


「ならば、父が薬を塗ってやろう。」


そう言って義父が立ち上がる。


「義父がやらずとも…、女中にでもさせれば…。」

「いや…、私も鈴にもっと聴かせろと言ってしまった。鈴の手の傷は私のせいだ。」


気を遣う義父が廊下に控える女中へ直ぐに薬箱を持って来いと言い付ける。


「では…、姫様…、また明日に…。」


絖花が鈴に頭を下げて部屋を出る。

鈴を膝に抱える義父が女中に届けさせた薬を塗る。


「昔、こんな風に鈴の爪を切ると、鈴はよく私を引っ掻いて逃げようとしたが、今は随分と大人しくなったな。」


義父が懐かしげに話をする。

留守ばかりの俺に鈴が反発していた頃の事だ。


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