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戦場に響く鈴の音
第25章 家族



「おっ父…、鈴はもう、子供じゃない。」

「ああ、そうだな。立派な姫だ。だが立派な姫は無理などせぬ。鈴はまだまだという事だ。」

「次からは気を付ける。」


俺の代わりに義父は鈴に我慢を教える。

俺が偉そうに言ったところで、原因が俺である以上、鈴は義父に言われたように素直に聞いてくれはしない。

義父はわかってて、俺の代わりに鈴を叱る。

それでも鈴に甘い義父はしょげた鈴の頭を撫でて甘やかす。


「今夜は久しぶりに3人で食事をしよう。斎我に鈴の好きな芋の煮物をたくさん作らせよう。」

「おっ父とご飯が食べられるのか?」


義父の家臣が滞在中は鈴と食事をする暇などなかった。

雪に道が閉ざされつつある天音には、もう最低限の家臣しか残って居らぬ。

家族だけになる天音では義父が鈴と食事をしたいと俺に強請る。


「構わぬか?神路…。」

「黒崎当主である義父の言葉は絶対ですから…。」

「それでも、ここは、もうお前の屋敷だ。」


急に義父が小さく見えて、俺の身体が凍り付く。

頼むから…。

もう少しだけ義父に黒崎当主で踏ん張りを見せて欲しいと思う。


「鈴…、斎我には義父の好きな鴨も用意しろと伝えて来い。それと俺には酒…。」

「斎我には伝えるが、お酒は却下する。柑では茂吉と毎日のように飲み比べをして大変だったではないか。」


義父に叱られて、しょげていた鈴が部屋から駆け出してく。


「酒か?」


今度は義父が俺を睨む。


「嗜む程度ですよ…。」

「前から、ほどほどにせよと言ってあるぞ。」

「理解しております。」

「全く…、うちの家族は…、どうしようもない家族だな。」

「夕食には雪南も呼びますか?」

「ああ、当然だ。あれにも神路の教育が悪いと一言言わねばならぬ。」


妙に元気になった義父を部屋へ残し、雪南を呼ぶ為にと言い訳をして義父から逃げる。


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