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戦場に響く鈴の音
第25章 家族
女は諦めたように抵抗を止める。
「暖炉に火を入れる。神路は床で待ってて…。」
何度か口付けを交わせば鈴がそう囁く。
鈴に手を引かれて寝室へと移動する。
酔ってるような感覚が襲う。
いや…、酔ったフリをしなければ、心に哀しみを抱く鈴を抱けなくなる気がして怖いのだ。
そんな自分の怯えを鈴に知られたくない。
だらしなく床へ寝転がれば
「だから、飲み過ぎだと言ったのに…。」
と寂しく笑う鈴が俺の着物の帯を解く。
「酔ってても、お前は抱ける。」
鈴の肩を引き寄せて口付けだけを繰り返す。
「今夜はもう寝た方が良い…。」
鈴が俺の頭を抱えて寝かしつけようとする。
「なんだよ…、俺とはしたくないってか?」
「そうではない…、神路が疲れてると言ったのだ。」
いつもの様に拗ねてるのかと思えば、鈴は穏やかな笑みを浮かべて俺を見る。
「大丈夫だよ…、神路…、鈴は待てる。神路が鈴のところへ帰って来ると信じて待てるから…。」
そう呟く鈴が俺に無理をするなと言う。
昨日まで柑に居た。
最後の2日間は宿すら出ずに鈴と愛し合い過ごした。
誰にも邪魔はさせず、飯や風呂すら忘れて獣の様に鈴の身体にむしゃぶり付きのめり込んだ時間…。
それが遠い昔のように感じる俺は怖くて鈴を抱き締める。
「大丈夫…、大丈夫だからね。」
母親の様に言い聞かせる鈴が俺の頭を撫でる。
「鈴…。」
「愛してる…、鈴は神路だけを愛してる…。だから神路は何も心配せずとも良い…。」
ポツリポツリと鈴が語る。
少ない口数…。
なのに、鈴の一言で俺は一喜一憂させられる。
鈴の唇や指先が触れる部分が熱くて堪らない。