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戦場に響く鈴の音
第25章 家族



少女はいつの間にか大人の女へと変わってく。


「シー…、大丈夫よ…、神路…。」


鈴の声が頭の中で木霊する。


「り…。」

「シー…、今は眠って…。」


鈴が同じ言葉を繰り返す。

視界がボヤけて何も見えない。

ただ、全身が熱くて堪らない。

込み上げる衝動…。

女を抱きたい訳じゃない。

俺以外の全てを破壊したいという欲望を感じる。

常に付き纏う、その感覚を僅かでも鈍らせようとして酒に溺れて自分を誤魔化す。

漢は皆、そんなものだ。

茂吉も寺嶋も…。

あの雪南ですら、その衝動が抑え切れずに俺が進む路へと勝手について来る。

漢は鬼を抱えてる。

女はその鬼ごと漢を抱く。

まるで、鬼を眠らせるかのように漢に安心を与えて眠りに導く。

堕ちるような感覚だけを味わう。


「り…。」


宙へ伸ばす手を小さな手が包み込む。

後は暗闇だけだった。

金色の瞳が見えたような気がする。


「鈴っ!」


飛び起きた俺の頬に鈴の唇が触れる。


「目が覚めたか?」


ご機嫌な可愛らしい笑顔が俺の顔を覗き込む。


「鈴…。」

「まだ寝ぼけてるの?」


チュッと俺の唇を奪う鈴が笑う。

妙に頭がスッキリとしている。


「夕べ…、何があったのだ?」


俺に寄り添う鈴に問う。


「何も無い…、ああ、夜中に寝ぼけた神路が鈴の身体中に変な跡を付けていた。」

「俺が?」

「覚えてないと言うのか?」


鈴が自分の胸元を肌蹴て見せる。

小さな膨らみの横に痣のような跡がある。


「柑で付けたやつだろ?」

「違う…、柑で付けたのは反対側だ。」


鈴が更に着物の合わせを広げる反対側の膨らみにも確かに俺が付けた跡がある。


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