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戦場に響く鈴の音
第26章 軍議
野盗は20人以上居た。
李の城から逃げた由の残党兵だろうと雪南が予測する。
『生かして大河との取り引きに使うか?いや、拾われっ子など大河には暇つぶしの道具だと切り捨てられるだけか?ならば、ここで殺して大河への見せしめとして遺体を吊るしてやろうか?』
俺を完全に捕らえたと勘違いした野盗の頭領が俺の処遇を悪い頭で吟味する。
『どちらも困るんだよねー…。』
呑気な声がして次々と野盗達が倒れ出す。
『佐京っ!』
俺の叫びに佐京は答えず
『拾われっ子でもさ、うちの親父のお気に入りなんだよ。ましてや殺されでもしたら、あの大城主が間違いなく由攻めをやる。それをやられたら俺が遊んでる暇がなくなるのよ。』
ブツブツと誰に対する文句かわからない独り言を垂れながら佐京が次々と野盗を切り落として行く。
『新しい女を買ったばかりなんだよ。俺の遊びの邪魔をすんな。』
俺の背筋に冷たいものが流れる。
佐京の刀は野盗の頭領の首に刺さっているが、佐京はお前のせいだと言わんばかりに俺を睨む。
『邪魔をして…、悪かった。』
俺は佐京に敗北を認めるしかなかった。
謝罪をする俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜる佐京が垂れ目を下げてニヤリと笑う。
『なんのなんの…、黒崎の坊やを守るのが羽多野の仕事だからな。俺がちゃんと仕事をしたと黒崎の大殿様に伝えてくれよ。』
俺を天音の屋敷へ送り届けた佐京は、そんな言葉を残してフラフラとしながら立ち去った。
以来、佐京には女と酒を好きなだけ与え続けろと義父から命が出された。
佐京が欲しい物さえ与えれば、佐京は俺の為に、その能力を使うと義父が言う。
佐京の使い方を間違えなければ、俺は好きなように生きられる。