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戦場に響く鈴の音
第26章 軍議
あの頃と変わらぬ笑みを浮かべる佐京が俺を見る。
あの頃とは違う俺は佐京に命ずる。
「夢物語で終わらせるつもりか?佐京…。この先も女に不自由をしたくなければ俺の計画を成功させろ。」
父親の羽多野が佐京を睨む。
黒崎の命令に失礼な態度を取るなと息子に言いたいのだろう。
羽多野の視線など慣れている佐京は平然としてやがる。
「この先もと言ったか?」
佐京が俺に確認する。
「俺はお前の言葉を義父にちゃんと伝えたぞ。」
「確かに、そうだ。」
突然、佐京がゲラゲラと馬鹿笑いを始める。
「佐京っ!無礼だぞっ!」
羽多野が止めようとしても佐京の馬鹿笑いは止まらない。
最後はヒーヒーと腹を抱えて笑い出す。
「───して、返答は?」
佐京に回答を求める。
馬鹿笑いをしながら俺の計画の成功率を計算してやがる。
何故なら、佐京の眼は全く笑ってない。
「いいよ、坊っちゃん。お前の計画に協力してやる。」
佐京がそう答える。
「坊っちゃんと呼ぶな。」
「計画が成功したら、ちゃんと殿と呼んでやるよ。」
戦に成功すれば、俺に従うと佐京が言う。
道中で俺がヘマをすれば、佐京は即座に俺を裏切る。
「呼ばせてやるよ。お前の主は俺だ。」
佐京との言い争いに羽多野がますます眉間に皺を刻む。
「黒崎様、佐京など連れて行かずとも…。」
老体の羽多野がクソ真面目に俺に寄り添うと言う。
羽多野の気持ちは有難いが、俺が制する家臣は佐京だ。
「羽多野にも来て貰うが、羽多野の仕事は決まってる。」
老体に鞭を打つ気はない。
「黒崎様…。」
俺を武士として育ててくれたのは羽多野だ。
その恩は忘れない。