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戦場に響く鈴の音
第26章 軍議



軍議は終わりだと、俺は羽多野親子を残して広間を出る。

次は水野に蒲江の和希…。

須賀や寺嶋のように蘇へ残す人間にも、こちら側の動きに合わせる行動を指示する。

天音を出る前日に直愛が俺の部屋までやって来る。


「久しいな。風真…。」


実直がそのまま顔に出る直愛を今も嫌いだとは思わない。


「今日はお言葉を頂きたく、図々しいとは思いながらも押し掛けさせて頂きました。」


慎重が似合わぬ直愛が、慎重な言葉を口吟む。


「俺の言葉が欲しいと?」

「何故、私が外されたのかと…。」


由へ直愛を連れて行かぬ事が不満らしい。


「お前は西元城主だぞ。」


城主がホイホイと城を空けては意味が無い。


「ですが…。」


由を攻めるなら西元からの補給は必然…。

その指示すら受けておらぬと直愛が不満を露にする。


「しかも、笹川の姫である彩里様すらも連れては行かぬとお聞きしました。」


思ったよりも早く彩里の耳に由攻めの話が伝わっている。


「あれは黒崎の人質だ。」

「彩里様は黒崎様の妻では…。」

「妻は鈴だ。」

「その考えは…。」


帝の決定に逆らう事だと馬鹿正直な直愛が目を見開く。


「貴方という人は…、ならば友として言わせて欲しい。私は黒崎様の為に尽くす所存であります。彩里様も妻として黒崎様の良いように協力をすると言われている。由で黒崎様が何をなさるつもりかはわかりませぬが、足手まといにはなりませぬ。」


だから連れて行けと直愛が強請る。


「お前は西元の城主だ。彩里は人質…、それだけの事…。」

「黒崎様っ!」

「新たな武功でも上げたいのか?お前は彩里の父である万里を討っただけで風真の名を手にした。俺は黒崎の名を手にする為に万里如きの首では足りぬ。」

「私は黒崎様の為に風真の名を頂いた。貴方はもう黒崎の名を持つ者ではありませぬか?」


直愛が食い下がり声を荒げる。


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