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戦場に響く鈴の音
第27章 道中
恥じらいを覚えた女子にますます唆られる。
「村で鈴を抱きたい…。」
そう耳元で囁くだけで鈴が耳まで真っ赤にする。
「道中はまだ長い…。」
鈴が俺に遊ぶなと叱る。
由で油断をすれば命懸けの旅になる。
誰もがそう思っているが、今の状況はそれほどでもない。
羽多野の30万の兵に合わせ俺と雪南が5万づつの兵を率いる軍勢の大遠征には由の村人達など道に伏せて軍勢が通り過ぎるのを静かに見守るしか出来はせぬ。
向かう先は笹川の嫡子、孩里が居る城の暁(あかつき)となる。
笹川の領地は3つに別れ、それぞれが陽(よう)の街の暁、夜(や)の街の朧(おぼろ)、原(げん)の街には宙(そら)と3つの城と城主が存在する。
暁の城主は万里…、万里亡き今は孩里が収めてるが、宙が一番、由の大城主が居る街に近く、そこは長男だった万里の弟で次男だった伯里(はくり)の物だ。
三男の透里(とおり)は朧…。
蘇と无に一番近い街だが、それを繋ぐ街道はなく、山に隔たれたままとなる街は万里と伯里に頼らねば生きて行けぬ状況だった。
万里を失った事で伯里と透里が手を組み、新らたに暁を得た孩里だけが現在は孤立している。
その暁までまともな街道があれば3日もかからぬはずが、道が狭いからと大軍勢は進まない。
「1週間はかかるか?」
馬だけを先行させるかと悩むところだが、迂闊に分断するのは避けたいとも思う。
「何故、こんなに街道が悪いのに、万里は西元を大軍で攻める事が出来たのだ?」
鈴が俺に問う。
「万里の場合、雨期の前と後で分散して兵を移動させたからな。しかも、各地の村からバラバラで集めた為、狭い道でも関係なく兵を集める事が出来ただけだ。」
俺の答えに鈴が悩む。