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戦場に響く鈴の音
第27章 道中
「ならば、こちらも分散するしか手立ては無いのか?」
バラけてしまえば狭い道でも早く進める。
但し、それはリスクを負う。
「ここが蘇なら、そうしている。だが、ここは由だ。分散すれば農民でも襲って来るぞ。」
俺の答えに鈴が嫌そうな表情をする。
農民は戦う為に襲って来る訳じゃない。
冬越えが終わったばかりで、飢える寸前だからと兵が持つ糧を目当てに襲って来る。
下手をすれば村全体で飛び掛って来るから、小さな村だとしても少人数で抜けるのは危険だ。
「手は無いのか?」
鈴の問いに笑う。
「手は打つものだ。」
そう答える俺を疑うように鈴が見る。
「村です…。」
雪南が俺に報告する。
村の手前で軍勢が止まる。
40~50人程度が暮らす村…。
規模としては普通だと思う。
「鈴は、馬と待ってろ。」
鈴を残し馬を降りる。
「神路っ!」
「問題無い。」
心配する鈴を残し、茂吉と雪南を連れて村へ近付く。
村側では数人の男達が身構えて俺達を待っている。
「蘇の侍か?」
男の一人が聞いて来る。
「蘇の筆頭老中、黒崎様の軍勢だ。」
雪南が言い返せば
「黒崎の…、では…笹川の彩里様の…。」
男達が俺に向かって頭を下げる。
男達の後ろから羽多野のと変わらない老体が現れる。
「婚姻の振る舞いだと冬越えの為の糧が黒崎様より村へ配られました。我らは蘇の人間であろうと黒崎様には大変感謝をしておりますが、此度は何故の遠征かを聞かせて頂きたい。」
多分、村の長老だろう。
落ち着いた物腰で俺の前まで歩み寄る。
「暁の義弟やらの問題を片付けたいだけだ。だから、村人が兵に徴収されたりはせぬ。」
俺の話で長老が安堵したように大きなため息を吐く。