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戦場に響く鈴の音
第27章 道中
冬越えをしたばかりで働き手を兵に徴収されれば、滅ぶ村も出る。
もしも、由との戦ならば、この小さな村も軍勢に押し潰されると長老は警戒していたらしい。
「それで黒崎様がわざわざ、このような村に何用ですかな?」
暁へ行くだけなら素通りするはずと長老がまだ警戒する。
「ちと、道が狭くてな。畑や田を通る事を許して欲しい。礼なら充分にしてやる。」
「田畑をですか?」
「畑は出来るだけ避ける。だが、田は何も無いだろ?」
「馬が通れば、地が踏み固められてしまう。」
「わかっておる。その分の苦労は我慢をしてくれ。その代わり、糧は冬越え前の倍を出す。」
「倍…ですか!?」
今回の遠征は人数が多い分、食糧もかなりの量を運んだ。
更に、食糧だけは別働隊の兵に運ばせる手筈になっている。
その食糧を小さな村へバラ撒く事で行軍のスピードが上がれば、大した赤字にはならない。
寧ろ、大軍をダラダラと移動させて時間を使えば、その分の消費は計り知れないものだと雪南が言う。
「わかりました。黒崎様の軍勢はお好きなだけ田畑の上を通って頂いて問題はありません。」
長老が納得すれば話は早い。
「暁までの道中の村を教えてくれ。出来れば早馬で、この村の人間を送りたい。この先で同じ説明をしたくない。」
雪南が長老と話を纏める。
俺は馬で待つ鈴を迎えに行く。
「少し、休憩だ。その後は一気に進める。」
馬から降ろした鈴が俺の首に腕を巻き付けてしがみつく。
「鈴?」
「神路がやる仕事では無い。村人が襲って来たらどうする?由から神路は西元の鬼と呼ばれてるのに…。」
万里との戦いで俺は10万という兵を土石流で消し去った。