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戦場に響く鈴の音
第28章 説教
俺や茂吉には出来ぬ事だ。
子供達に恐怖や脅しを与える事は出来ても、鈴のように安らぎを与える事は不可能だと思う。
一番小さな子が京八が手にする握り飯に手を伸ばす。
「お前らっ!そんな物は食うな!」
洞窟の中から少年の声がして一気に飛び出して来た子供が小さな子の手を引き自分達の後ろへと隠す素振りを見せる。
「こいつ、西元の鬼だ。こいつのせいで皆のおっ父が死んだんだ。こんな奴の飯など食うなっ!」
鈴より少し大きな子供…。
どうやら、この子供の代表らしい。
子供は14~15人というところ…。
5歳以下が5人ほど居るが10歳以上は、この少年だけだ。
鈴は音を止めず、穏やかな表情のまま弾き続ける。
決して敵意は無いと子供達に伝える為だ。
「如何にも、俺が西元の鬼だ。だが、そうだとしてお前らはどうする?おっ父の敵として俺を殺すか?」
鈴が奏でる音色とは裏腹に俺は少年を挑発する。
「全部、お前のせいだ。冬前にお前の使いが村に米をバラ撒いた。直ぐに侍達がやって来て、その米はおっ父を殺した西元の鬼の物だと教えてくれた。だから米は全部、陽のお殿様の物だと侍達は村の蓄えだった米を含めて全部持ってった。」
俺が余計な事をしたから村が飢えたのだと少年が訴える。
「それでお前はこんな場所で何をしてる?飢えた村を見捨てて逃げ出したのか?」
こいつは俺と同じ…。
怒りだけで蘇の兵を相手に無謀な戦いを挑もうとしてる。
「俺が居なくなれば、おっ母と妹だけは食って行ける。ここに居る子供は皆の為に村を出た。」
「それで他の村の田畑から作物を盗んで生きてると?」
「それ以外に生きる方法なんかないっ!おっ父は戻らない。全部、お前のせいなんだっ!」
少年の言葉が刃のように俺を襲う。