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戦場に響く鈴の音
第28章 説教
茂吉や京八が唖然とする。
引張叩かれた挙げ句に説教まで受けた少年も泣き出した鈴にバツが悪そうな表情を浮かべる。
やっと足が動く。
「鈴…。」
興奮する鈴を抱き上げれば
「うわぁーっ!」
と大声で鈴が泣く。
「もう良い…、鈴は一生懸命にやった。鈴の気持ちは伝わった。」
泣く鈴の背を叩いて慰めてやる。
「お前、何処の村の子だ?村へ帰してやる。お前の母と妹がちゃんと食えるだけの米も与えてやる。だから、俺達と来い。」
鈴が泣き出した事で少年は俯いたままになり、少年よりも小さな子達はいつの間にやら京八から握り飯を貰い食い始めている。
「茂吉、俺と鈴は馬で先に行く。雪南達に追い付かねばならん。子供達と鈴の荷物を任せるぞ。」
しゃくり上げる鈴を抱っこしたまま茂吉に命ずれば
「相変わらず、人遣いが荒い旦那だ。」
と茂吉が独り言のように毒突く。
「何か言ったか?」
「いいえ…。一生、旦那に付いてきやす。」
「漢なら、自分で路を歩け。」
「旦那の生きる路が一番っすよ。」
俺と茂吉の会話にプッと吹き出す鈴がようやく笑い出す。
「笑い事じゃないぞ。鈴…、心臓が止まるかと思った。」
子供達が武器を持ってない事はわかっていた。
それでも、あの人数で鈴に襲いかかれられれば間違いなく怪我くらいはさせられる。
「悪かった。でも…、神路が侮辱されるのは許せない。」
頑固な鈴はそこは譲らずに俺の頬に口付けをする。
「こら、誤魔化すな。」
「誤魔化したりしていない。」
林を抜け、草原側へ戻り鈴を馬へ乗せる。
「神路っ!」
鈴が悲鳴を上げるから思わず刀へ手が伸びる。
振り抜いた刀は俺の背後に居た奴の喉元で止まる。