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戦場に響く鈴の音
第28章 説教
そんな事をガキ二人に決められたら堪らない。
「こら、鈴…、勝手に決めるな。また雪南に叱られるぞ。」
とにかく鈴を止めようと鈴の口を手で塞ぐ。
「もごっ?ふはっ…。」
俺の手を振り払う鈴がジッと俺の顔を見る。
「なんだよ?」
「少年が信用すれば良いだけだ。」
「だから、村へは茂吉達と帰れと…。」
「違う。鈴も神路が怖かった。梁間と違う神路が何を考えているかわからずに戸惑った。神路は違ったのか?」
鈴にそう聞かれて返答に詰まる。
俺も散々、大城主に噛み付いた本人だ。
助けると言われ、うかうかと話に乗れば、何をされるかわからぬ恐怖が先にやって来る。
少年は村に着いた瞬間、茂吉達が村を襲うかもと警戒をしてる。
西元の鬼は由へ戦をしに来たのだから…。
「わかった。少年…、名は?」
「無斗 与一(むと よいち)…。」
「与一か…。馬には乗れるのか?」
「無理だ。」
「鈴…、前に詰めろ。与一は俺の後ろへ…。落ちたら置いて行くからな。」
与一が慌てて馬へよじ登る。
「狭い…。」
俺に背中を密着させる鈴が愚痴を零す。
「殿様の小姓のくせに自分で馬に乗れないのか?やっぱり女はダメだな。」
与一が鈴をせせら笑う。
「馬には乗れる。乗り方は寺子屋でちゃんと学んだ。」
鈴が澄まして答える。
但し、馬術の成績も最下位に近く、一人で乗せるには危険だと判断されたから俺の馬に乗っている事実は割愛する。
「二人共、口を閉じろ。3人も乗れば馬には負担になっている。少し飛ばすから舌を噛むな。」
流石に馬を走らせれば、子供二人は押し黙る。