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戦場に響く鈴の音
第28章 説教
だが、慣れて来るや否や状況は元の木阿弥だ。
「なあ、兄ちゃん…。女の小姓なんか役に立たねえだろ?」
「鈴は神路の尊を預かる者だ。」
「尊ってなんだよ。お前は難しい事を言ってばかりだ。男の格好をして琴を弾いたり、なのに馬には乗れないとか、そんな小姓は変なだけだ。」
「鈴は神路の妻でもある。」
「嘘吐くな。兄ちゃんは冬に陽の殿様の姉ちゃんと結婚したばかりだぞ。」
「あんな女…、神路は要らぬと言って捨てて来た。」
「お前を戦場に捨てに来たの間違いじゃねえの?」
「何を言うっ!?」
子供の喧嘩に付き合っては居られぬ。
「二人共、黙れと言ったはずだ。黙らぬなら、二人揃って、そこいらへ置いて行くぞ。茂吉にでも回収をして貰え。」
そう叱れば
「「悪いのはこいつだ。」」
と鈴と与一が仲良く叫ぶ。
「鈴…。」
「わかっておる。でも与一が…。」
「お前っ!女のくせに偉そうにすんなっ!」
「与一が悪いから神路に怒られたのだぞ。」
「兄ちゃんが怒ってんのはお前だけだ。ざまあみろ!」
「俺が怒ってんのは二人共だ。いい加減にしろっ!」
一瞬は黙る二人だが半時もせずに元へ戻る。
昼過ぎにやっと本隊へ合流が出来ただけで、ひたすらため息が出てしまう。
「私は何でもかんでも拾ってはいけないと躾けたつもりですが?黒崎様…。」
二人の子供がまとわりついたままの俺を見て雪南が嫌味を言う。
「俺が拾ったんじゃない。拾ったのは鈴だ。」
「鈴の責任は保護者である貴方の責任…。」
「今更、放り出せねえよ。」
「そんな事よりも問題が…。」
馬を降りた雪南が俺について来いと顎をしゃくる。