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戦場に響く鈴の音
第28章 説教
「なら、兄ちゃん達は何をしに来たんだよっ!?」
堪らず与一が叫び出す。
「籠城は防御がしやすく城に居る兵だけを確実に守る事が出来る戦略だ。但し、攻める側は近隣の村や街を容赦なく襲う事となる。ましてや暁は城下街を抱えている。街の人間を見せしめに殺して籠城を解く戦略を取られれば城は守れても民は守れなくなる。」
もしも俺が伯里なら、孩里に対してそういう戦略を取ると与一に説明をする。
「つまり、兄ちゃん達は街を襲うつもりなのか?」
青ざめる与一が俺を睨む。
「襲わねえよ。俺達は孩里を城の外に出す為に来たのだから…。」
「城の外に?」
「本来なら孩里は朧と宙の双方に構える事が出来る街道で陣を立てて牽制するべきだった。その方法ならば民に被害を出さずに戦を展開する事が出来たのだ。」
俺の言葉をしっかりと与一が聞く。
「だが孩里は自分の城を守る事だけで精一杯になり、民から糧を取り上げた上に新たに兵を集める事すら難しい状況へ自分を追い込んでしまった。」
冬越えが出来なかった村人など歩兵としてすら雇えない。
「その間に伯里や透里に孩里討伐の準備が出来る時間を与えてしまったのが今の暁の状況だ。」
雪南が俺の後を引き継ぐように説明を進める。
「だから孩里を城から出し、さっさと朧を攻め落とす。幸いな事に暁や宙と違い、朧は城下街を持っておらぬ。民への被害は最小限で済むはずだ。」
「それ故に俺達には時間が無い。明日にでも暁に入り愚かな義弟を外へ出す。それが此度の由遠征の最初の目的だ。わかったなら与一は村へ帰れ…。お前にかまけてる時間など無い。」
俺と雪南の説明に与一がウンウンと頷く。