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戦場に響く鈴の音
第30章 予測



「黒崎様っ!」


朝っぱらから雪南が俺の天幕へ飛び込んで来る。


「ふぁ?」


欠伸半分で返事を返す。

最近は朝が辛くなくなったとはいえ、日が半分も出てない時間に起こされれば機嫌が悪くなる。


「朧が…。」


雪南が険しい表情をする。


「佐京が何かやったのか?」


まさか夜襲で朧を落としたとかじゃないよなと雪南を睨む。


「いえ、後は原の宙を見張らせていた斥候から早馬が…。」


寝ぼけていて状況が全く掴めない。


「朧がどうした?それに斥候から早馬だと?」


寝ぼけたまま寝台から降りて天幕の外へ出る。

鈴の奴はまだ寝てやがる。

小姓のくせに起きて主の為に準備くらいしやがれとか考えながら朧を見れば俺の些細な考えなど一気に吹き飛ぶ。


「白旗だと?」


朧が天守閣に白旗を上げている。


「无が来たという事か?」


振り返り雪南に確認をすれば


「朧を襲う予測が外れ、无は宙へ侵攻中でございます。」


と勝ち誇った表情で報告しやがる。

雪南の予測じゃ朧へ无が来た段階で透里が孩里を頼り、俺達に朧を引き渡すはずだった。

だが无の軍勢は夜の朧に蘇の軍勢が来てる事を察し、10日分の道のりは離れた宙へと進路を変更した。

朧へは宙からの救援要請が来てるのだろう。

无に宙を攻め落とされれば朧は完全に孤立する。

そうなるくらいなら孩里に休戦を申し立てて宙への救援に向かいたいのが本音となる。


「つまんねー…。」


俺と同じように天幕から出て来て朧を見た佐京がボヤく。


「まあ、雪南の予測は完璧ではないからな。」


佐京の出番はなくなったと言ってやれば


「蒲江の坊やが一番ホッとしたんじゃねえの?」


と垂れ目を更に下げてゲラゲラと笑いやがる。


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