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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
佐京は佐京なりに武功を上げたかっただけだ。
由まで来て、何もしなかったとなれば狂戦士の名が地に落ちる。
「お前の出番はまだまだある。戦はまだ終わってないからな。」
「そうだな。黒崎の殿よ…、お前となら楽しめそうだ。」
佐京が初めて俺を殿と呼ぶ。
完全に認めちゃくれていないが、朧攻めは間違いでなかったと俺を認めた褒美だと思う。
「佐京…、朧へ行き、白旗の真意を確かめて来い。」
佐京に仕事を与える。
「はあっ!?俺が?朧に一番嫌われてんのに?そういう仕事こそ蒲江の坊やが適任だろ。」
「だからこそだ。お前が行って冷静に対応が出来るなら、あの白旗は本物だろう。万が一、罠だとしてもお前なら切り抜けて帰って来れるし…。雪南は他にする事がある。」
「何をやらせるつもりだ?」
「俺の朝飯の用意…。」
「てめぇ…、ふざけた殿様だな。」
幾ら吠えても佐京が可愛く見える。
「お前だから頼めるのだ。」
罠なら全滅か人質にされる。
佐京だから任せる事が出来る。
こいつは簡単に人質になどなりはしない。
自信を持つ俺に佐京がため息を吐く。
「わかった。ちょっくら確認に行ってやる。」
僅か10人の兵だけを連れて佐京が本陣を出る。
「雪南…、宙の状況を報告しろ。」
佐京の背を眺める雪南に命ず。
「2日前、无が20万の兵を率いて宙の前へ現れたと…。その後の報告は昼前には来ると思います。」
「引き続き報告をさせろ。无の総大将などわかる範囲で全てを報告しろと伝えておけ…。」
「既に、こちらからの早馬を送り、街道沿いにも早馬の配置を指示してあります。」
夕べは悔しくて眠れなかった雪南だったくせに、仕事が早いと笑うしかない。