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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
「佐京の報告も直ぐに入れろ。俺に朝飯を持って来い。」
俺はのんびりと構えるだけだ。
「鈴は?」
雪南が眉を寄せて聞く。
「鈴なら…。」
天幕の方を見れば大きな欠伸をしながら目を擦る鈴がフラフラと出て来やがる。
「鈴っ!黒崎様の為に朝の準備をして差し上げろっ!」
まだ寝ぼけている鈴を雪南が叱る。
朝から叱られては可哀想だと俺は鈴を抱き上げる。
「神路…、お腹が空いたのか?」
寝ぼけたまま俺の顔に頬擦りする仔猫が聞く。
「ああ、朧が落ちた。忙しくなるから早く目を覚ませ。」
鈴の頬に口付けて話してやる。
「朧がっ!?」
「落ちた。白旗…見えるか?」
鈴を抱き上げたまま朧に向けてやれば鈴がウンウンと頷き、俺の手から飛び降りる。
「直ぐに神路の支度をしてやる。朝食も貰って来る。神路は天幕で待ってろ。」
偉そうな小姓が笑顔を振り撒き走り去る。
「こら、鈴っ!本陣の中を走るな。」
雪南の説教はもう鈴の耳には届いていない。
やっといつもの雪南だというだけで安心する。
雪南が言うように、昼前にはある程度の報告が入る。
朧から無事に戻った佐京がニヤリと笑う。
「朧城主、透里が直々に黒崎の殿と話をしたいそうだ。」
朧と俺が構える本陣との間に簡易の天幕が張られる。
会談を行う場…。
朧からは城主の透里と老兵の木野、それに王(わん)を名乗る赤毛の大男が現れる。
赤毛の大男…。
万里に似た風貌から笹川の親戚筋だと感じる。
こちら側は雪南と佐京を伴った。
王が佐京を見た瞬間、全身から殺気を放つ。
「話がしたいと言ったのはそちらだ。」
俺の言葉に木野が王の威嚇を片手で制す。