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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
透里は万里とは似ていない。
寧ろ、孩里と同じ雰囲気を持っている。
何処か頼りなく、優しいだけの城主…。
それを守る為に木野と王が奮闘しているのがよくわかる。
「宙へ无が来た事は?」
木野が警戒するように聞く。
あまり俺達に有利な情報は漏らしたくないというのが本音だろう。
「知ってる。だから、さっさと朧を明け渡して宙へ行けば良かったのだ。」
そうすれば无は間違いなく朧へ来た。
「冗談ではない。だが、宙が落とされれば朧は孤立無援となる。悔しいが今は孩里様に朧を預け…。」
「悪いが朧は俺が貰うと言ったはずだ。蘇は朧を手に入れても孤立などせぬからな。」
バンッと椅子を蹴飛ばす王が叫ぶ。
「貴様らはふざけてるのかっ!」
透里は王の叫びにビクリと身体を震わせる。
「ふざけてねえよ。无が来る事はこちらは百も承知だった。だからこその朧引き渡しを伝えたのだ。さっきも言ったが蘇は由と違い孤立などせぬ。お前らがくだらない身内争いをしてるから无に攻撃をする隙を与えたのだ。自業自得って奴だ。」
「无が来ると知ってだと?ならば蘇は无と組んでるに違いない。」
「お前、万里に似て頭が悪いな。蘇は冴と同盟国、无が蘇と手を組む事など有り得ない。ましてや俺は由の笹川の姫を娶ってる。どう考えても无の方が俺と組む事を認めはしない。」
「笹川の姫婿だと言うならば、こんな場所で兵を構えず、宙へ行くべきではないのか?当主の孩里様が居るのだから…。」
「宙の戦は俺には関係ない。助ける言われもない。孩里が暁から連れて来た2万の兵ならくれてやる。但し、宙も籠城するつもりなら兵を増やせば苦しいだけになるがな。」
王が俺の話に言葉を失う。