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戦場に響く鈴の音
第4章 出陣
「この程度は痛くない。だが鈴は明日にでも女中に言って爪を切って貰え。」
俺の言葉を無視して鈴が俺の首に腕を回し顔を寄せる。
つっと鈴が俺の首の傷に舌を這わす。
一瞬、ゾクリとした。
生暖かく柔らかい鈴の舌の感触がする。
チロチロと動く鈴の小さな舌が俺の首筋を傷口に沿ってゆっくりと舐め上げる。
それは妙に生々しく、少しばかし擽(くすぐ)ったくて俺の性的な何かを刺激する。
「こらっ!」
「舐めたら早く治るとおっ母が言ってた。」
「それは間違った知識だ。」
冷静になる為に鈴を俺から引き離す。
勝手なもので、また1人にされると勘違いをする鈴は俺から離れまいと必死に俺にしがみつく。
身勝手な仔猫。
「寝ろっ!」
堪りかねて寝かし付ける。
性欲はまだそんなにある方じゃない。
まして鈴は男だ。
小姓だからと男が男の性欲処理に使われる苦痛と屈辱は俺が嫌という程に知ってる。
それでも鈴の少女の様なあどけなさには俺の方がしてはいけない勘違いをしそうになる。
訳がわからない興奮を感じる。
鈴を辱めたい衝動…。
馬鹿な事を…。
御館様が言うように俺が小姓を持つにはまだ未熟だから、こんな浅ましい考えをしてしまうのだ。
俺を拾った時、御館様には1歳になる娘が居た。
御館様は明らかに大人の漢だった。
俺はまだガキのまま…。
仔猫に振り回されて引っ掻かれる。
引っ掻き傷が変に熱くて疼く。
そこに、もう一つ心臓がある様な感覚。
無理矢理に鈴から顔を背けて眠る。
朝になれば鈴は勝手に俺の床から出て行く。
そういう勝手な小姓だと何度も頭の中で繰り返していた。