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戦場に響く鈴の音
第4章 出陣



「黒崎様っ!」


寝起きくらい聞いてて気持ちの良い声で起きたいものだ。

しかも、目を開ければ鼻先に真面目腐った雪南の顔がある。


「夜這いか?」

「もう、とっくに陽は登っております。」

「夕べ、遅かったんだよ。」


直愛のせいだと言い訳する。

だが雪南は切羽詰まった声を出す。


「黒炎より緊急の使者が参っております。黒崎は奥州を伴い至急登城されたしと…。」


黒炎からの呼び出し…。

わざわざ使者を立ててるならば、俺が頼んだ奥州への褒美の話とは全くの別物だ。


「登城の準備を…。」

「出来ております。」


風呂なんかに入ってる時間はなく、桶の水で顔を洗い髭を剃る。

謁見などの公式の登城では無いので藍の小袖に黒の肩衣(かたぎぬ)と袴を履いただけの簡易礼装に着替えをする。


「神路…。」


雪南が居るから部屋の外に居た鈴が襖の端から顔を出す。

今日の鈴はちゃんと水色の小袖に蒼の袴を履き、髪を組紐で束ね、ちゃんと小姓らしく見える姿になってる。


「鈴は留守番な。」


鈴の頭をひと撫でして玄関に向かう。


「鈴も行く。」


不安な鈴が俺の袴を握る。

幾ら小姓の格好をしたところで礼儀や仕来りを知らない鈴を登城などはさせられない。


「義父と待ってろ。すぐに帰る。」

「神路…。」


泣きそうになり俯く鈴を義父が抱き上げる。


「本を読んでやる。お菓子も食べよう。」


義父はそうやって鈴を宥める。

鈴は表情を見せずに義父の言葉に頷く。


「遅くなりました。」


直愛も慌てた様子で玄関に走って来る。

客人として滞在する直愛だから黒炎からの使者が来た事は伝えられても俺の様に雪南から強引に起こされたりはしない。


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