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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
図体ばかりで頭の悪い奴では話にならない。
それは朧側も理解をしてる。
「なら、朧を明け渡せば、蘇は由に力を貸すのか?」
呟くように透里が言う。
「殿っ!?」
王が叫び、木野の眉間に皺が寄る。
「黒崎殿は无が来るとわかっていた。なら、この先、どうすれば良いかもわかっていて、ここに居る。もう時間が無い。万里の兄上が死んで笹川には无を押さえる力が残っていない。」
泣き言のように語る透里を木野が手を添えて支える。
「殿が言うように、黒崎殿には考えがあると?」
木野が透里の言葉を引き継ぎ話をする。
王は完全にそっぽを向いた。
「孩里の兵は持って行け。必要な糧も送ってやる。无が引くまで宙で持ち堪えろ。」
俺の説明に木野と透里が固まる。
「持ち堪えろ?」
「そうだ。持ち堪えろ。次の状況まで、まだ時間はある。」
「しかし…。」
「当主の孩里はこちらで預かってやる。ひと月も持ち堪えれば嫌でも无は引く事となる。」
「ひと月も…。」
「籠城は得意だろ?時間が無い。さっさと決めろ。ひと月は不自由なく籠城が出来る支援を蘇から送ってやる。それが朧の引き渡しの条件だ。」
朧から神国へ向かう街道から山越えで天音へ行ける。
険しい山越え故に大量の兵で攻める事は出来ぬが物資の運搬は充分に可能である。
暁側からも蘇からの支援は受けられる。
由が朧を手放せないのは神国への道が絶たれるという部分だけだ。
あくまでも孩里を連れた俺が朧を取ったところで孩里が居る限り、由の民は今まで通りに神国への行き来が出来る。
さりとて、僅かひと月で蘇に城を二つも取られたとなれば笹川の家が取り壊しになる危険も孕んでいる。