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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
「案ずるな。戦とは常に状況が変化する。由も変化を受け入れる時代が来ただけだ。全てが終われば笹川は孩里を当主として落ち着いた暮らしが出来るようになる。」
まずは孩里の教育…。
民から奪うだけのやり方は古いのだとわからせる必要がある。
時間はかかる。
その戦は始まったばかりだ。
「黒崎殿を信じろと?戦は朧と宙だけの問題ではないのか?」
木野が疑うように俺を見る。
「お前らが見てる戦は氷山の一角に過ぎない。戦とは生き物だ。刻刻と変化を齎し、成長する。」
「そんな、まやかしを信じろと?」
佐京が夢物語だと笑ったように、木野もまやかしだと俺の言葉に疑いを持つ。
「とにかく、朧は貰う。この条件が気に入らねば、狂戦士が朧に攻め込み、宙は持ち堪えられずに无の物となる。笹川は御家取り壊しが決定して、お前達は行き場を失うだけの事…。」
贅沢が言える立場ではないと透里に詰め寄る。
「条件を…飲む…。」
力無く透里が呟く。
王が歯ぎしりをし、木野が俯いた。
これが現実だと俺はこの目に焼き付ける。
踏み出す一歩を間違えれば、俺の方が佐京や雪南にこのような表情をさせる事となる。
条件が決まり次第、俺は朧へ入り、孩里の兵を使って宙へ物資の支援を送る。
佐京が言うように、朧には4万ほどしか兵がなく、それを引き連れて透里は宙へと向かった。
「これから、どうなる予定だ?」
仮ではあるが朧城主に収まった佐京が城の広間にある主が座る台座に腰を掛けて聞いて来る。
「何もしない。待つだけだ。」
天音に残した寺嶋へ早馬は出た。
燕の義父や黒炎にも連絡は済んでいる。