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戦場に響く鈴の音
第30章 予測
佐京が垂れ目を細めて欠伸をする。
「待つのが好きな坊っちゃんだな。」
俺はまた坊っちゃんに逆戻りだ。
佐京は俺が甘いと思っている。
宙への支援は由の大城主がすべき事だから…。
但し、貧しい由で大城主は民から搾取して支援を行う事となる。
それでは、この戦の意味が本末転倒で終わってしまう。
「佐京の好きな酒を届けるように寺嶋へ伝えたが、それは無駄になるようだな。」
朧から佐京が逃げれば酒が無駄になると言ってやる。
「無駄にはしねえよ。後、女も付けてくれよ。あの琴を弾く黒崎の姫を一晩ほど貸してくれるだけでいいぜ。」
「お前になど鈴は貸さぬ。」
鈴が黒崎の姫だと、今や末端の兵までもが知ってる。
黒崎の姫が欲しいと佐京までもが口にする。
「何でも自分の物でなければ気が済まない殿だな。」
佐京が俺の腹を探るように観察する。
雪南も鈴も俺のものだという態度が気に入らないらしい。
「お前も俺の持ち物だ。」
わざと佐京の気を逆撫でしてやる。
佐京がふっと笑い
「大城主の大河もそうだが、大きな事をやる奴ははったりだとしても自信過剰な方が良い。」
と呟く。
万里もそうだったな。
そんな事を思い出す。
「俺ははったりだけで終わらせはせぬ。」
はったりだけで終われば俺も万里のように討たれる。
「その調子で進め…。」
意味深な発言を残し佐京が台座から立ち広間を出ようとする。
入れ替わりに広間へ来た鈴の頭を撫でる佐京が
「今度、俺の寝所へ来い。琴を弾いてくれれば俺が気持ち良くさせてやるよ。」
と下品な言葉で鈴に嫌な顔をさせる。
「お前の寝所になど行かぬ。」
「そうか?俺はあの黒崎の殿様より楽しい男だぞ。」
ゲラゲラと笑う佐京が出て行く。