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戦場に響く鈴の音
第4章 出陣
今日の登城は輿などでのんびりと行く訳にいかない。
馬に乗り、黒炎の城下を直愛と雪南を伴い駆け抜ける。
黒炎の城門前で門番が俺達にひれ伏す。
俺達が来る事は先に知らされており、城門は既に開かれてる。
それほどまでの火急の要件…。
嫌な予感しかしない。
礼儀などに構わず本丸への通路を走り抜ける。
「黒崎様っ!ご登城っ!」
伝令の声が俺達を追うように木霊する。
謁見の間の襖までが開かれた状況で俺は頭すら下げずに広間へと入り込む。
今日は家臣が誰も居らず、奥の座敷に胡座をかいて構える御館様の姿が見える。
その手前まで行き膝を付けば、直愛と雪南が後ろに並んで正座をしてひれ伏する。
「早急ですまなかったね。」
御館様が声を掛ける。
いつもよりも緊張を含む声…。
「いえ…、御館様の呼び出しとあれば…。」
俺の言葉を御館様が遮る。
「西元が由に堕ちた。」
重く息苦しい言葉…。
流石の直愛が頭を上げる。
「まさかっ!?」
礼儀を忘れた直愛が叫ぶ。
「直愛殿っ!」
御館様の言葉を待てと冷静な雪南が直愛を嗜める。
西元は砦…。
籠城に長けた城…。
そもそも由との国境に川が流れる為、自然の外堀に守られた形で築城されている。
川は決して深く無いが馬で渡るならばともかく、人が渡るにはそれなりに体力を必要とする。
由から攻め入るにはその川越えが必須であり、籠城されれば厄介になる砦…。
俺は蘇側から攻め込んだ。
だから籠城の構えでも楽勝だったに過ぎない。
それを由から攻め込んだ者が居る。
「籠城には火攻め…、お前の手の内が利用された。」
苦い声で御館様が俺を諭す。
俺が西元への楽な攻め方を晒したからだ。