この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦場に響く鈴の音
第31章 天使
李の暴挙に立ち上がった若き大河様が支羅を元の西元とした後は奏がどのように国を治めて来たのかはわからない。
「…っという程度しか知らん。」
ドヤ顔をする俺を生暖かい目で雪南が見る。
「本当に何も知らないのですね…。」
この状況までを想定していたのだから、御館様に聞いておくのが普通だろうと予習復習に余念のない雪南がため息を吐く。
「要するに由に散らばる各領主に好き放題させて、美味い汁だけを吸い上げる小物って事だろ…。」
不貞腐れて答えれば
「その小物でも、相手は大城主…。孩里や透里とは違います。」
と雪南が嫌そうに俺を睨む。
「戦をする訳じゃない。城を取る訳でもないし…。」
「だが、こちらに大人しく従わなければ、切るも止む無しだという事はお忘れなく。」
大城主を切れば、待ってるのは死罪…。
怖い事を平気で言いやがると雪南を睨む。
俺の睨みなど気にも留めない雪南…。
「明日は朝が早い。さっさと寝て下さい。」
と笑顔で言う。
この笑顔がますます怖いと思う以上、雪南に背を向けて黙って寝るしかない。
磐が近付くに連れて野宿が増えている。
磐の兵士に見つからない為の手段としては正しいが、野宿の小汚い侍が首都となる城に登城は出来ず、磐に入り次第、京八が押さえた宿で風呂に入り着替えを行う必要がある。
磐は目の前…。
俺の後ろ盾がどこまで通じるかが鍵となる対談…。
緊張からまともに眠るなど不可能だ。
失敗すれば、大城主に切られる。
だからこそ、奏という大城主が小物であって欲しいと希望的観測でやり過ごす。
夜が明ける前には起きる事となる。
「準備は宜しいか?」
冷静な雪南が聞く。