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戦場に響く鈴の音
第31章 天使



「俺がやれる事は全てやった。今更、後悔しても仕方がない。」


自分の馬鹿さ加減に笑うしかない。


「まだ全てではありません。貴方の帰りを待つ者のところへ帰り着くまでは油断なさるな。」


最初から諦めるなと雪南がやんわりと叱る。


「へーへー…。」


それに不真面目に答えるのが俺だと思う。

馬を走らせて京八が待つ宿へ入る。


「磐はどうだ?」


京八に報告させる。


「神の商人の跡継ぎという触れ込みで入りましたが、大金を積まねば商売の許可が降りないとか役人が言うのです。この街の商売人は皆が大城主の息が掛かった者が独占で商売をしております。」


たかが塩が蘇の5倍の値段だと京八が肩を竦める。


「どれだけ、がめついのやら…。」


呆れて言葉にならない。


「この宿にもかなりの金子を払いました。田井兄弟など宿にすら入れずに商人の物置で寝泊まりしてます。」


京八が俺達以上に田井兄弟が汚れていると冗談を仄めかす。

俺と雪南は京八の親戚が後から来るという話で宿へ入り込んだ。

想像以上にやりにくい街だとしか思えない。


「雪南…。」

「はい、作戦は変更する。」

「作戦とは?」

「派手な登城をやると言ったのだ。」

「危険は覚悟の上です。」


地味に登城する予定だった。

ギリギリまで俺の身分は伏せる段取りだったが、俺と雪南を乗せる輿の手配だけでも、この街じゃ足元を見られる。

ならば、開き直って俺が蘇の黒崎だと見せつけて登城する方が手っ取り早いと考える。

襲って来る奴がいれば、片っ端から切るしかない。


「とにかく風呂だ。」


京八が宿に用意させた風呂へ入る。

髪を結い直し、登城の為の正装となる着物に着替えて宿を出る。


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