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戦場に響く鈴の音
第31章 天使
「予想通りに丸腰にされたな。」
凡そ、謁見の間では刀を構えた兵士達が控えている。
俺の態度が気に入らなけりゃ、直ぐにでも切られて終わる謁見だと腹を括る。
「蘇、筆頭老中代理…、黒崎 神路様、他一名の登城…。」
大袈裟な前触れが上げられて謁見の間への戸が開く。
奏の家臣は誰も居らぬというのに、縦長に伸びた部屋の一番奥の台座には派手に紅く光る金の着物を着た小さな男が胡座を崩した姿勢でだらしなく座っている。
長い口髭を生やし、薄く禿げ上がる白髪の髪を無理矢理に束ねて威厳を保とうとしているが、神経質にキョロキョロと動き回る細い瞳は俺と雪南を行ったり来たりしながら視点が定まらない。
これが奏…。
やはり大城主としては小物だとしか言い様がない。
「近こう寄る事を許す。」
入り口付近で立ち止まった俺と雪南に手招きする。
大城主の前へゆっくりと進みながら
「どのくらい居る?」
と小声で雪南に確認する。
「20~30というところでしょうか…。」
雪南も小声で返して来る。
一見、誰も居ない部屋だが、廊下や隣の部屋から緊張を帯びた気配だけは感じる。
大城主に逆らえば、容赦なく切れと命じられている兵士達だろう。
「バレバレで控えるな。」
兵士達の未熟さに笑いだけが込み上げる。
大城主の前でひとまずは片膝を付き頭を下げる。
「某、蘇は筆頭老中、黒崎の嫡男、神路…。由の大城主の召喚により参上致しました。」
一応の礼儀だけは尽くしてやる。
雪南も俺と同じ姿勢で俺の一歩後ろへと控える。
「此度、お前が成した城攻め…、由への侵略として蘇へは抗議を申し立てたが、何か言い分があれば聞いてやる。」
完全に上から目線の大城主が俺の侵略は蘇の大城主の命令かと腹を探って来る。