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戦場に響く鈴の音
第31章 天使



もしも、蘇に居る御館様の命令とあらば、神国の帝に対する謀叛だと奏は騒ぎ立てるのだろう。

そうはさせぬと、とぼけてやる。


「侵略とは?」


俺の答えに奏が眉をへの字にする。


「とぼけるか?暁と朧の一件だ。それと同時に行われた无の侵略…、全てがお前の仕業だな?」


この辺の話は想定内だ。


「暁も朧も某の義弟である笹川当主、孩里のもの。宙への无の侵攻目的は存じませぬが、笹川当主の要請に答えるべく、某は宙への支援の約束を果たしております。」


あくまでも笹川の婿として由へ来たと申せば


「ほう、ならお前は由に付くと申すのか?そもそも、蘇の拾われっ子と揶揄されるが、元々のお前は由の生まれ、蘇を捨てて由に付くと言うならば、悪いようにはせぬがな。」


子鼠がニヤリといやらしく笑う。


「何のお話かわかりかねます。」


更にとぼけて焦らしてやる。


「値踏みをしておるか?由は蘇に比べて貧しいと言われる国…、だが蘇の平等博愛主義など生温いだけだ。笹川の当主といえど、孩里など未熟過ぎて話にならぬ。其方、孩里に変わって笹川当主とならぬか?さすれば蘇よりも莫大な領地を手にし、その全てがお前の物となる。後は民から好きな物を好きなだけ取り上げる。それが由の習わしだからな。」


下卑た笑顔で奏が勝ち誇る。

由では蘇のように大城主や宰相の顔色を伺う事なく好き放題に出来ると奏が言う。

反吐が出そうだと思う。

義父のように、まともな領主ならば、そのやり方でも民は楽に生きられるが、李のように吸い上げるだけの領主となれば、村々は飢え、戦で踏み荒らされる田畑が死ぬだけだ。


「某、蘇の筆頭老中黒崎の嫡男、神路…、そんなくだらない戯言を聞き入れると?」


俺はあくまでも黒崎であり、蘇の人間だ。


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