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戦場に響く鈴の音
第31章 天使
俺の答えが癪に障ったのか奏がまた眉をへの字にする。
「まだ…、欲しい物があるというか?」
俺の欲を値踏みする表情が浮かんでる。
「そう、欲しいのは貴殿の身柄…、蘇は筆頭老中代理として某は由の大城主、奏 恵照の身柄を拘束に来た。」
本音を晒し、由の大城主と向き合う。
「余を拘束に来ただと?」
奏の言葉で雪崩のように兵士達が謁見の間へ入り込み、丸腰の俺と雪南に刀を向けて威嚇する。
「これが最後の情けじゃ、ここで切られ、その首を蘇の大城主に送り付けられるか、素直に儂に従うかだ。」
自分の勝ちを確信する奏が高らかに笑う。
愚かとはいえ、一国の大城主…。
俺が刃向かえば、神国、帝への謀叛と見なし、俺を切り捨てる事が奏には許されている。
但し、こちらには雪南が居る。
「某は蒲江 雪南…、筆頭老中代理の相談役を務める者。由の大城主におかれては誠に申し訳ない事だが、某の護衛を切るという事は明らかに帝への謀叛…、我らが亡き後は、由の奏は御家取り壊しが決定し、地図から由という国が亡くなりますぞ。」
俺を庇うようにして雪南が前へ出る。
「帝への謀叛?御家取り壊しだと?老中の相談役如きが切られたところで神国は動きはせぬ。」
奏の馬鹿笑いが続く中、冷静な雪南が徐ろに袂へ手を入れ、書状を取り出す。
「これは神国、帝からの書状…、内容は由国、大城主を神国へ連れて参れという召喚状…。大城主、奏 恵照は現在、帝への謀叛の嫌疑が掛けられている。奏殿の申し開きは、先に行なわれる神国大祭で帝が直に聞かれるとの事…。」
雪南が自分は天使だと名乗りを上げる。
天使とは天帝である帝の使者を意味し、由において、その天使に何かあれば、それは全て大城主の責任として問われる事となる。