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戦場に響く鈴の音
第31章 天使
大城主の奏は万が一でも俺達が民に襲われた場合、自分の責任となると怯えている。
その為の護衛役を受けたのが晋…。
「好きにしろ。」
別に護衛の必要は無いが由の兵と居る事で民は蘇の黒崎が由の大城主と懇意であると理解を示す。
それは蘇にも由にも有利になる。
せこい情報操作にだけは微妙に長けている奏に呆れる雪南が冷たい視線を城の天守へと向ける。
宿の前で待っていた田井兄弟と京八が俺と雪南について来た晋達に警戒して身構える。
「大丈夫だ。これらは朧までの警護の兵…、由の兵が居れば田井達も宿が使える。」
田井達に説明をすれば
「ならば早く田井兄弟を宿の風呂へ…。」
と京八が顔を顰める。
ほんのりと田井兄弟からは腐った卵の様な匂いが漂っている。
「確かに臭いな…。」
「間違いなく臭いんですよ。」
京八が田井兄弟を睨むと
「だったら京八が農民という触れ込みをやれば良かったんだ。元々、俺ら兄弟は商人の子…、山育ちで叉鬼の子だった京八が商人と名乗るよりも上手くやれたのに…。」
と兄の方が不貞腐れる。
残念だが、強面の顔を持つ田井兄弟は商人の子だったが街のゴロツキをやっていた経歴がある。
明らかに男前の京八の方が商人という触れ込みで磐の街に警戒心を与えずに済むはずだと雪南の判断で選ばれた役割…。
「田井…、諦めろ。」
とりあえず田井の兄の肩を叩き慰めようと試みる。
「何をですか?」
田井の兄はポカンと口を開き間抜けな顔で俺を見る。
「世の中、男は顔なのだ。俺は今日、この磐でそれを嫌という程に理解をしたのだ。」
「それは男前なら何でも有利って事っすか?」
雪南と並ぶ京八を田井の兄が睨む。