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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
「与一っ!」
多栄だけは与一が無礼だと叫ぶが、思わず多栄の腕を掴む。
「与一の事は構わぬ。それよりも鈴が佐京の寝所に居るというのは誠か?」
多栄に確かめる。
「佐京様は人払いをされております。」
泣きそうな表情をする多栄が報告する。
多栄達では城主にあたる佐京には逆らう事が許されない。
「わかった。」
城に上がり、目指すは佐京の寝所だと突き進む。
「黒崎様っ!」
雪南や多栄が呼び止めるが、冗談じゃないと佐京の寝所まで一気に駆け抜ける。
「おい…、佐京…。」
佐京の寝所の戸を開いた事を後悔する。
「てめぇ…。」
頭が真っ白になるほど熱くなる。
抜いた刀を振り上げれば、慌てる佐京が鞘に収めたままの刀で受け止めやがる。
「ちょ…、待て、坊っちゃんっ!早まるな!」
「うるせーっ!問答無用だ。」
鈴は間違いなく佐京の寝所に居た。
無表情なまま、佐京の為に琴を弾く。
佐京はだらしなく床に寝転がって酒を浴びていた。
上半身が裸の佐京を見た瞬間、俺の頭に血が登る。
ピンッと一際、高い音を出す鈴がスクリと立ち上がり、佐京の寝所から出て行く。
「てめぇ…、鈴に何をしたっ!?」
昔と同じ無表情しかしない鈴が佐京に何かされたのは間違いないと思い込む俺は佐京に切り掛かる。
「何も…、いや、それなりに落ち込んでいる姫様の面倒はちゃんとみてやったよ。」
「どんな面倒だよっ!」
器用な佐京は片手で握る刀で俺の刀をかわす。
「坊っちゃんが考えてるような事はねえよ。」
ヘラヘラと笑う佐京にますます怒りが湧く。
「嘘を言うなっ!」
「嘘じゃねえよ。坊っちゃんのせいで姫様が飯すら食わずに死ぬんじゃねえかと城中の者が心配したからな。」
そんな事はわかり切ってるとひたすら刀を振り上げては佐京に向かって振り下ろす。