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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
俺が悪い…。
鈴がどうするかをわかってて鈴よりも戦を選ぶ男だ。
今更、鈴に捨てられたって文句は言えぬが、佐京だけは許せないと暴れ狂う。
「マジ…、落ち着けっ!俺は姫様には何もしてねえよ。」
ただ俺の刀を受け止め続ける佐京が叫ぶ。
「うるせーっ!」
「ガキの八つ当たりなら止めてくれよ。そりゃ、姫様が死にそうだって坊っちゃんが連れてるガキ達から相談をされた時は慰めてやろうとか思ったよ。黒崎の姫様は下手な花魁よか綺麗だからな。」
「黙れっ!」
「けど…、何も出来なかった。」
「黙れと言っただろっ!」
「出来ないんだよ。」
俺が振る刀は弾き返されて、佐京が垂れ目を吊り上げ本気の顔で俺の喉元へ刀を突き付ける。
佐京の刀は鞘に収まったまま…。
馬鹿にしてんのかとますます怒りが込み上げる。
「俺と、ちゃんと戦えっ!」
ガキが喚き散らしたところで佐京は聞いてられないと首を振る。
「何も出来なかったと言ってんだろ?俺の寝所に来た姫様は月の障が始まったんだ。姫様を溺愛してる坊っちゃんはどうか知らねえけど、血塗れになる女子を抱く趣味は俺にはねえよ。」
クックと佐京が思い出し笑いをする。
「月の…。」
障…。
鈴に初潮が来たと佐京が言う。
しかも、初潮で混乱する鈴の面倒を見て慰めたのが佐京だとまで言われれば、力が抜けて手に握る刀が床へ落ちる。
「飯は相変わらずほとんど食わねえが…、誰の為だが琴だけは穏やかな顔で弾くからさ。坊っちゃんが帰るまでは俺の部屋で好きなだけ弾かせてたって訳だ。」
佐京が状況を話すが俺の耳へは全く入って来ない。
「初潮が…来たのか?」
間抜けにも佐京に聞く。