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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
「ああ、えーっと…。」
垂れ目が宙を見上げ、指を折りながら何かを数える。
「先週、終わったとか言ってたな。確か、今は孕みやすい時期に入ったはずだ。3週間もしないうちに次が来るから、さっさと仲直りしないと黒崎の世継ぎが出来なくなんぞ。」
「はあ?」
「とにかく、坊っちゃんはこれ以上、俺の昼寝の邪魔をするな。」
刀を拾った佐京が俺を部屋から蹴り出す。
「おいっ!佐京っ!」
湧いた怒りをどこにぶつけて良いかわからなくなる。
正直、混乱してる。
鈴に初潮が来た。
完全に女子となった鈴にどんな顔をすれば良いかますますわからなくなる。
「初潮…っ!?」
やばいと思う。
慌てて鈴を探し城中を駆け回る。
「鈴は?」
通りすがる茂吉や多栄達に聞いても
「姫様なら佐京様のお部屋では?」
としか返事が返って来ない。
早く見つけなければと気だけが焦る。
鈴の無表情は俺のせいだと理解をする。
あれは、初潮が来れば花街へ売り飛ばされると思い込み、ずっと怯えて生きて来た女子だ。
俺が燕に帰れと突き放した後に初潮が来たとなれば、鈴の心は限界に近い状況まで追い込まれたに違いない。
だから、早く見つけてやらねばと気持ちだけが逸る。
「鈴っ!」
闇雲に探したところで見つかるはずもない。
考えろ…。
俺が知る鈴…。
拗ねて隠れる仔猫…。
俺だけが見つけられると思い込む仔猫の隠れ場所…。
「俺の部屋だ。」
仔猫の居場所は常にそこだとしか思えない。
思えないくせに、どうしても足が竦む。
俺の部屋の押し入れの戸が僅かに開いてる。
かくれんぼ…。
俺が見つけてやらねばと押し入れの前に座り直す。