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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議



やたらと緊張する。

あいつは琴を弾いて俺を待ってたのに…。

俺はその音を無視してまで佐京を切る事で頭がいっぱいになっちまった。

情けないったらありゃしねえ。

怒りで目覚める鬼を諌める事すら出来ない未熟者…。

それでも鈴に伝えたい事だけはわかっている。


「あー…、あのな、鈴…。」


いざとなると言い訳しか思い付かない。

あいつには言い訳をしたくない。


「すまなかった。謝って済む事じゃないとはわかってる。これは俺の身勝手だと思う。こんな、やり方しか出来ない以上、お前が燕に帰ったとしても仕方がないとは思ってる。」


鈴が聞いてるかはわからない。

納得をしてくれなくとも、理解をして欲しいと本音を言う。


「お前に捨てられるのが怖い。お前が怖かったように俺も本当は怖いんだよ。だから…、鈴…。」


押し入れの戸の前で床に頭を付ける。


「ごめんなさい…、頼むから…、燕に帰るとか言うな。」


みっともないとか言ってらんねえ。

鈴が居ない方がみっともない話だと思う。

女一人をまともに守れない男が国を守るとか大口を叩いても意味が無いとしか思えない。


「鈴…?」


押し入れの向こう側は沈黙してる。


「押し入れに向かって、何をブツブツと言ってるのだ?」


拗ねた声は俺の背後からする。


「鈴っ!?」

「押し入れと会話をして楽しいのか?」

「いや、お前が中に…。」

「そんな子供染みた事などせぬ。」


口調から怒りを感じるが、鈴は無表情のままだ。


「鈴…、悪かった。だから…。」


癖みたいなものだ。

無意識に鈴へ両手を広げる。

無表情だった仔猫が眉を眉間にギュッと寄せ、ふわりと俺の腕の中へ向かって飛んで来る。


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