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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
「ごめん…、本当に悪かったから…。」
仔猫の頬に口付けをして謝るしか出来ない。
「情けない顔をするな。神路は一国を変える武士なのだろ。そんな顔の漢には誰もついて来はせぬ。」
雪南のような口調で俺も叱る。
なのに、それが暖かく嬉しいとか思っちまう。
「鈴…、初潮が来たと…。」
そこまで言うと俺の頬から
パンッ!
と小気味良い音が鳴る。
「痛え…。」
またしても平手打ちを喰らった。
「変な事を言うからだ。」
耳まで真っ赤に染める鈴が眉を吊り上げる。
「いや、だって…、大事な事だぞ?」
「皆まで言わずとわかっておる。」
「お前…、黒崎の…、俺の子を産む気はあるのか?」
「知らぬっ!」
「お前なら…、燕に帰れば…、黒崎の姫として縁談が山ほど来る。それを諦めて俺の妾のままで良いのかを聞いてんだよ。」
「そんな事は佐京から散々聞かされた。勝手に鈴を置いて行く神路なんかよりも良い男は山ほど居ると…。」
「佐京の話の方が俺の話よりも大事かよ。」
「違う。無駄な話をしてると言ってるのだ。鈴は神路の小姓で妻だ。今までと何も変わらない。今度、鈴を置いて行くような真似をすればただでは済まさない。」
仔猫が俺の着物に爪を立てる。
微かだが、その手が震えてる。
それほどまで俺が鈴を怖がらせて追い詰めた。
鈴の怯えが痛いくらいに俺の心に突き刺さる。
「痩せたな…。」
鈴の震える手を握る。
「そんな事はない…。」
気丈に答える鈴の手の平に口付けをする。
「なら確かめてやろうか?痩せてなけりゃ、抱いた時に骨が当たらないと前に言ったろ。」
抱く気満々の俺に鈴は雪南のように冷たい視線を見せる。