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戦場に響く鈴の音
第32章 閣議
同じ初めてでも鈴は違う。
凛と姿勢を正し、真っ直ぐに孩里を見据えている。
多栄は鈴の意見に合わせるつもりだとわかる。
「あのー…、条件付きとは?」
茂吉が雪南に問う。
「それについては、この次の議題で説明する。今は孩里殿の参加を認めるかを決めるのだ。」
淡々と言う雪南に茂吉が怯えた表情をする。
自分の決定が間違いだと、最悪の状況になると経験から茂吉は理解をしてる。
問題は与一…。
孩里の参加を認めないと佐京のように手を上げる。
「決議、賛成が四、反対が二…、孩里殿の閣議参加を認める。但し、孩里殿には閣議における決定権は無いものとする。」
雪南の声が広間に響く。
孩里は閣議に同席するが多数決には含まれない。
僅かだが茂吉が安堵の表情を浮かべる。
「では、次…、これが今回の閣議の本題となる。朧の城主の決定だ。」
雪南が本題を口にすれば
「俺が城主だろ?」
と佐京が露骨に嫌な顔をする。
「暁の羽多野殿とは違う。此度、暁は正式に笹川当主である孩里殿から黒崎様が貰い受けた。」
「だから、それは朧もだろ?」
「いや、朧はまだ笹川家の物…、つまり、暁は黒炎から城主を羽多野殿にする決定を頂いたが、朧については仮城主の決定しか出ていない。」
佐京を城主にするなど黒炎は認めない。
わかってて俺と雪南は佐京をあくまでも留守番用の仮城主に仕立てただけだ。
万が一、无が侵攻して来た際、佐京なら食い止められる。
理由はそれだけだった。
しかし、今は状況が変わった。
「まさか、笹川の坊やに朧を返すとか言うつもりか?」
佐京が怒りを含む口調で雪南を睨む。