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戦場に響く鈴の音
第33章 悪夢
「無理だ。」
「何故じゃ?」
「御所内は女子の立ち入りが禁止されているからな。」
「────っ!?」
鈴が絶句する。
詳しくは知らないが、御所は女子の立ち入りを禁じている。
従って鈴は絶対に入れない。
「なら、大河様には黒炎に帰ってから会えば良いではないか…。」
たかが1日の留守番で半ベソをかきやがる。
「無理…、帝からも召喚されているからな。」
「はぅ…。」
それでも生命の危険はなく、ひと月も置いて行く訳ではないからと鈴なりに納得をしてくれる。
「絶対に1日だけじゃな?」
「ああ…。」
「絶対に…、ぜーったい1日じゃな?」
「執拗いよ…、お前…。」
「神路だって、床に入れば執拗いではないか…。」
「お前だって、悦んでるくせに…。」
ケラケラと鈴が笑う。
天音に帰ってからは鈴も落ち着いている。
ただ、時折
「おっ父は、お元気にしておられるだろうか?」
と不安そうに聞いて来る。
手紙を出したところで、この3ヶ月は移動ばかりで義父からの返事は手元に届かない。
春以来、会ってない。
それが淋しいと鈴は俺の胸元に顔を埋める。
「鈴…。」
「なんだ?神路も忘れ物か?」
「神からの帰りは燕へ行く。そのつもりで居ろよ。」
鈴が瞳を大きく開き、飛び切りの笑顔を浮かべる。
「神でのお土産…、いっぱい買えるか?」
義父へ送りたいのだろう。
「ほどほどにしてくれよ。由の遠征では赤字だったのだからな。」
「鈴のお小遣いも出すから…。」
そう言うと鈴が俺の頬に口付けする。
「好きにしろ。」
自分の物を買わない鈴が義父の為に買い物をするくらいで目くじらを立てても仕方がないと笑う。