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戦場に響く鈴の音
第33章 悪夢
翌朝、柑からの連絡船が天音を経由し、俺や鈴を乗せて東側にある天理街道へと向かう。
「この街も大きいのだな。」
初めての街では鈴が落ち着きを失くしキョロキョロと辺りを見渡しては俺の袖にしがみつく。
「まあ、柊と同じくらいだからな。天太はもっと凄いぞ。燕と変わらない大きさを誇るからな。」
「そんなに大きいのか?」
「ああ、天太を抜け汐元殿の領地である庄条(しょうじょう)の街から神への街道を抜ける事になる。」
「汐元?」
「一応は武家となるが汐元は商人の一族が多い。田井の居た村でも汐元と取り引きをしてる。黒崎は蒲江のお陰で生産品が多く、汐元とは付き合いが旧い。」
黒炎じゃ兵を自衛分しか持たぬ汐元は黒崎派の扱いとなる。
「鈴も…、寺子屋に入る時に祝いとして、寺子屋で使う本や筆を全て揃えて貰っただろ?」
「あれは、おっ父が買ってくれたのでは?」
「そのつもりで注文をしたら、祝いとして送るから代は必要が無いと汐元から言われたのだ。」
「そうだったのか?」
「首席卒業の時も祝いが来てただろ?」
「うむ…、知らない人だからと、おっ父にご相談をしたら貰っておきなさいと言われた。とりあえず、お祝いをくれた全ての人には手紙を書いて雪南に早馬で出して貰ったの。」
「もしも、庄条で会う事があれば改めて礼を言えよ。まあ、汐元の場合、首席卒業者には何かと祝いを出したがる人だから、そう気にする事も無いが…。」
「何故、首席卒業者に?」
「根っからの商売人だからな。将来が有望ならば付き合っておいて損は無いと考えるお方なのだ。」
俺の婚姻の儀にも汐元から参加したいと申し出があった。