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戦場に響く鈴の音
第33章 悪夢
3日で行く予定だった庄条へ着くのは2日遅れになる。
「大祭には間に合います。」
雪南が気が立つ俺を鈴の為に宥める。
「そんなんじゃねえよ。」
真夏に行なわれる大祭…。
あと、ひと月もしないというせいか、庄条が近付くにつれ村や街では浮かれた民が飾り付けをしたりと準備が始まっている。
ただ苛立ちを感じながら、そんな村や街を眺めては通り過ぎる。
何故、こんなに苛立つのかがわからない。
神には何度も行ってる。
なのに、神の方角に苛立ちしか感じない。
あの社の宮司と会った時に感じた嫌な感覚に似ている。
「神路…。」
鈴が泣きそうな顔で俺を見上げる。
その視線を無視してしまうほどの苛立ちが抑えられない。
毎夜のように夢にあの宮司が現われる。
『男と逢い引きする趣味はねえつもりだが?』
俺の夢から消えろと宮司に嫌味を言えば
『もしかしたら貴方が私の夢に来てるのかもしれないと考えた事はありませぬか?』
と押し問答のような答えが返って来る。
『なんで俺がお前の夢なんかに?』
『夢だからですよ。』
宮司がクスクスと笑う。
相変わらず浮世離れしてる。
夢だから、それが当たり前なのだろうが現実感の無い宮司の違和感に警戒する。
『そんなに私がお嫌いですか?』
泣きそうに笑う宮司が聞く。
『得体の知れない奴は嫌いだ。』
俺の答えに宮司が眉を寄せる。
『得体が知れないのはお互い様…。』
『お前などと一緒にするな。』
『では、貴方は何処から来たと?そして貴方は何処へ行こうとしてるのですか?』
『俺は…。』
『歴史は繰り返し同じ事が起きる…、だから貴方もいつか…。』
いつか、なんだ?と手を伸ばす。
宮司は泣きそうに笑いながら消えて行く。