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戦場に響く鈴の音
第33章 悪夢
言うなれば天太は庄条のバックアップだ。
幾ら安全な地とはいえ自衛の兵しか持たぬ汐元が襲われれば、あっという間に街が滅ぶ。
黒崎が攻めにくい白銀山脈の裾に天太を置いたのも、援護が来るまで自衛の兵だけで持ち堪え易くする為…。
汐元には援護を黒炎、宇喜多、黒崎から出せる手配になっている。
国中が守る必要のある重要な街が庄条となる。
「天太の見学が必要無いと言ったのは、その為か?」
「まあ、そうだな。」
「それなら、そう言ってくれれば良いのに…。」
唇を突き出す鈴が拗ねた声で言う。
「多栄と買い物をした方が鈴は楽しいだろ?」
俺の質問に鈴がクスクスと笑い出す。
「なんだよ?」
「神路との買い物も楽しいぞ。女子が並ぶお店では顰めっ面をする神路が可愛いからな。」
「お前ね…、男に可愛いとか言うな。」
「可愛いよ。必死に買い物をする神路の姿を兵士達にも見せてやりたいくらい…。」
「見せねえよ、そんなもん…。」
買い物とか苦手だ。
何が欲しいのかすらわからない時は、特に嫌だとか思う。
何故かご機嫌の鈴が突然、唇を口へと押し付ける。
「今日は機嫌が良いな。」
「鈴はいつでも機嫌が良い。いつも機嫌が悪いのは神路の方だ。」
そんな会話をしたはずだが…。
「まだなのかっ!」
と鈴が眉を顰めて発狂する。
「落ち着いて、座って待ちなさい。」
涼しい顔で鈴を注意するのは雪南だ。
「だって、もう夕刻になるぞっ!」
街の入り口で汐元の兵士達足止めを喰らった為に鈴が聞こえるようにわざと叫ぶ。
この庄条だけは街の入り口にある門で身分の確認を必ず受ける。