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戦場に響く鈴の音
第34章 醜態



俺の話に汐元は最もらしくウンウンと頷く。


「なるほど…、天使として…。」

「まあ、天使ならば恥にならぬ準備をと水野に手配をさせて、汐元様には無理なお願いをした事をお詫びします。」


あの戦で汐元は充分に儲けさせたはずだと暗に匂わせる。


「それで…、由は?」


更に汐元が詰め寄る。

俺が手に入れた領地に新しい儲けがあるかを知りたいらしい。


「未開の土地が多く、街道の整備すらままならぬ状況ですよ。」


相も変わらず貧しい国のままだと答えれば


「そのままで済ませる神路殿ではあるまいかと…。」


と穏やかな笑顔で怖い事を言いやがる。


「そうですね…、この先があるとすれば汐元様にも何かとご協力を頂く事もありますかと…。」


汐元を蔑ろにするつもりは無いとだけは言っておく。

但し、無闇に爪を伸ばされては黒崎が破産しかね無いからと警戒だけは怠らない。


「さて…、今宵はもう遅い。後はご緩りとお休み下さいませ。」


一通りの話に一応は満足をした汐元が宴の席を立つ。

今頃は、他の商人を相手に抜け駆けしようと由の未開発な土地や街道の整備をするのに必要な資材の買い貯めをする算段を立てて走り回っているに違いない。


「相変わらず、油断が出来ぬお人です。」


あの雪南ですら商売に関しては汐元に一目を置く。


「蒲江の利権があるから黒崎側へ付いた一族…。迂闊に蔑ろには出来ぬから扱いには気を付けるよ。」

「黒崎様にしては懸命なご判断だと思います。」


やっと肩の荷を降ろし、普通に酒が飲めると安堵した俺の背筋に冷たいものが流れ落ち、ゾクリとした寒気が立つ。


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