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戦場に響く鈴の音
第34章 醜態



怒らせた…。

懲りずに鈴の機嫌を損ねる事しか出来ない自分に進歩が無いなとため息を吐く。


「鈴…、別に変な意味で言ったつもりは…。」


綺麗な瞳でじっと俺を見る鈴の前じゃ、いつだって言い訳の言葉しか出て来ない。


「女子らしく家で待ってる女が良かったという意味か?」


大きな金色の瞳には大粒の涙が浮かび出す。


「いや、違う…、鈴に留守番をさせるのは俺も辛い…。」

「なら…、何が気に入らない?」

「気に入らない事は何もない…。」

「でも神路は鈴が気に入らないのだろ?」


俯く鈴がすんっと鼻をしゃくる。

泣かせたと思うだけで胸の奥が痛くなる。


「鈴…、鈴を気に入らないとか絶対に無いぞ。」


小さな頭を引き寄せて慰めようと必死だ。


「でも…、気に入らないのだろ?」

「そんな事は無い。明日は庄条を見学するのだろ?鈴が居なければそんな事を俺はしない。鈴の為だからするのだ。鈴が居なければ意味がないと思うのに、気に入らない事などあるはずがない。」

「本当に…。」

「ああ、愛してる。鈴が居ないと困るのは俺だし、何処へだろうと好きなだけ鈴は連れて行くから…。」


後悔とは先に立たぬものだと知る。

顔を上げニンマリと満足そうに笑う鈴が


「鈴は好きなだけ神路の傍に居られるのだな。」


とか言いやがる。


「お前っ!?」

「泣き落としというらしい…、女子は僅かな涙を見せた方が男は言う事を聞いてくれると佐京が教えてくれたのじゃ。」

「前にも言ったが、佐京の言葉は信じるな。」

「だが、佐京は色々な事を知ってるぞ。例えば、柊の街で神路が絖花を買った事など…。」

「絖花の今の亭主は茂吉だ。」


ふーんとつまらなそうに鈴が鼻を鳴らす。


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