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戦場に響く鈴の音
第34章 醜態



「なんだよ?」

「神路は胡蝶の亭主だったではないか…。」

「あれは…、もう終わった話だ。今は鈴が妻だ。」


そう言い聞かせても鈴の腹の虫は治まらないらしい。


「神路にとって鈴は何番目の妻なのだ!?神路は笹川の姫とも結婚した。何処まで行っても、どれだけ時が経っても鈴は妻でなく妾にしかなれないのではないのかっ!」

「鈴、それは違う。」

「何が違う?鈴は黒崎の姫だからか?黒崎の姫になっても神路の妻にはなれず、妾のままなのだろ。」

「違う…、彩里とは離縁する。鈴が望むなら婚姻の儀をしてやる。今はまだ妾かもしれないが、いずれは間違いなく鈴が俺の妻だと言えるようにしてやる。」


その為の由遠征だった。

彩里を気に入らない雪南が離縁について散々調べ尽くした上での作戦である。

問題は神の帝の命じた婚姻だという部分だけだ。

その問題さえ解決すれば彩里との離縁は可能になる。


「始めは彩里に黒崎の子を産ませてから離縁を申し立てる予定だった。」


帝が認める黒崎の子…。

その子さえ居れば、西元も笹川の領地も黒崎のもので蘇のものだと主張が出来る。


「だが、彩里の子は要らぬ。俺が欲しいのはお前の子だ。」


鈴の子を黒崎の子と認めさせる事は難しいかもしれない。

それでも気のない彩里を孕ませるよりか、その方が余程良いと俺に付き従う人間は誰もがそう言う。


「鈴の子など…。」


鈴とて状況は理解をしてる。

理解をしてるからこそ、悔しさに唇を噛み締める。


「羽多野も須賀も…、鈴の子を黒崎として認めてくれる。」

「だが、蒲江は?風間は?木下や近江は絶対に認めはしない。」

「認めさせてやる。だから鈴はこれ以上、気に病むな。」


妾でも良いと居直っていた鈴だが由の遠征では、立場があくまでも黒崎の姫という扱いであり、俺の妻としては扱われなかった事を気にしている。


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