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戦場に響く鈴の音
第34章 醜態
「雪南っ!雪南は何処だっ!」
傍若無人に汐元の屋敷内を闊歩して叫ぶ。
何事かと汐元が雇う女中や護衛兵が廊下へと飛び出して来る。
「黒崎様っ!」
とある部屋の前を過ぎた時、雪南の声がする。
「雪南っ!答えろっ!佐京と宮司の関係を…。」
俺の問いに雪南が複雑な表情をする。
「佐京ですか?」
「あの二人は何なのだっ!」
「落ち着いて下さい。ここは汐元様の御屋敷…、こんな夜半に騒げば黒崎の御館様にも迷惑が…。」
「答えろ!雪南っ!」
雪南が俺に向かって腰にある刀の束を握る仕草を示す。
我を忘れ、鬼を目覚めさせようとする俺に対する威嚇…。
「落ち着きなされ…、黒崎様…。」
「雪南…。」
「大丈夫…、ひとまず、私の部屋へ…。」
膝を付いて崩れ落ちる俺を抱えて雪南が部屋へ運ぶ。
「何事ですかな?」
騒ぎに起きて来た汐元が俺を呼び止める。
「御騒がせしたようで申し訳ごさいません。我が主は今宵は飲み過ぎた挙げ句、おかしな夢にて寝ぼけたようです。」
「寝ぼけた?」
「本当に申し訳ごさいません。もし、良ければ主の為にお茶かお水を頂きたい。」
「すぐに用意をさせましょう。いやいや、黒炎では蟒蛇と称された神路殿でも酔う事があるとは…。」
「汐元様は黒崎の御館様と懇意…。主は汐元様に甘えてしまったのだと思います。」
騒ぎを探ろうとする汐元を雪南が上手く躱す。
「それはそれは…、神路殿は私にとっても息子の様な存在…。自分の屋敷だと思って寛いで頂ければ何よりですぞ。」
娘しか居なかった汐元は娘婿を跡取りとした。
その汐元がご機嫌な視線を俺に向ける。