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戦場に響く鈴の音
第35章 思惑



匙の泡が崩れ出し、鈴の表情も険しくなる。


「黒崎様…。」


鈴の気持ちを察せよと雪南が俺を責める口調で呼ぶ。

多江は机に頬杖を付き、俺の鈍さに呆れた顔をしてる。


「あー…。」


食えば良いのだろうと鈴が差し出す匙を口にする。

要するに甘党の仲間に入れと鈴が促してるだけだ。


「美味いか?」


鈴の質問に


「甘い…。」


と答えれば機嫌を治した多江と鈴がキャッキャッと二人だけで笑い出す。


「何が楽しいんだか…。」


甘味処の窓の外を眺める。


「箸が落ちただけで楽しい年頃ですよ。」


いつまでもケラケラと笑い続ける鈴と多江を穏やかに保護者の顔で雪南が見る。


「平和だな…。」


落ち着かないのは俺だけだ。

さっさと、この庄条から逃げ出したいとか考える。

鈴や多江みたいに状況を楽しむという行いが俺には難しい事のようにしか思えない。


「雪南、後は任せる。」


そう言って席を立てば


「何処へ行く…。」


と鈴が俺の袖を握る。


「ごめんな。鈴…、可愛げのない男で…。」


雪南を真似て女子の買い物に澄ました顔で参加が出来るほどの色男なんかやれそうにない。


「神路…。」


大きな瞳を見開く鈴の額に口付けをして、鈴の手を振り払う。


「神路っ!」


俺を追おうとする鈴を雪南が引き止める。


「鈴…、黒崎様の邪魔をしてはならぬ。」

「しかし…。」

「鈴との約束は果たしておられる。我儘を言って黒崎様を困らせてはならぬのだ。」


ここは汐元の領地…。

主である俺に恥をかかせるなと雪南が言う。

素直に鈴と街を楽しむ事が出来ない。

我儘なのは俺の方だとわかっているのに、鈴を悲しませるような態度しか取れない。


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