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戦場に響く鈴の音
第35章 思惑
真っ直ぐな眼差し…。
凛とした表情で弱さは見せぬと気張る姿を愛おしいと思う。
細い首…。
小さな顎は軽く指先で上げるだけで鈍く金色に光る瞳が細まりながらも俺を見る。
顎から輪郭に沿い指先を滑らせて耳の後ろまで撫で上げる。
「汐元様の御屋敷だから…。」
小さな吐息混じりの声で鈴が咎める。
「なら…、鈴が声を出さずに琴を弾き続ければ良い。」
鈴の後ろへ回り込み、髪を避けて白いうなじに口付けをする。
「そんな事をされれば落ち着かぬ。」
紅く染まる頬が膨らみ、丸みを帯びた唇を尖らせる。
いつもの拗ねた口調に唆られる。
機嫌を取る為に何度も鈴を抱いて来た。
汐元の屋敷だからと遠慮をしていたが、月の障だなんだと、ここ最近の鈴はろくに触らせてはくれなかった。
そろそろ自分の我慢も限界だと鈴の肌に指先が触れ続ける。
うなじに口付けたまま喉を指先が降りる。
「ふぁ…。」
仔猫が目を細めて喉を鳴らす。
止まる事を知らぬ指先が着物の袂まで降りて合わせを開けば、綺麗な谷間が露わになる。
「昔は平だったのに…。」
谷間に指を滑り込ませれば鈴がキッとキツい眼で俺を睨む。
「太れと言ったのは神路だ。」
「そうだな…、柔らかい肌の女子が好きだ。」
痩せて貧しい女子には同情や哀れみが先に出る。
かと言って贅沢三昧で無駄な肉の多い女子はお断りだ。
確実に俺好みの体型を維持しようとする鈴の気持ちは少しくすぐったい気もするが嬉しくもある。
「綺麗になったな…。」
ここ最近で随分と背も伸びた。
蘇一の美女と謳われた胡蝶太夫を上回る美しさだと噂されるほどの姫に成長した。